February 16, 2007

バビロンの扉・・・

 サンクチュアリ(聖域)を目指して歩いていた・・・ルートを記す地図も無くひたすら前に進むしか無かった・・・

自分の直感や感性・・・そして経験だけが頼りで・・・いつ辿り着けるのか・・・

本当にそんな場所は存在するのか?! 





あての無い旅だった・・・






 途中で見つけた小さな町や大きな町・・・

サンクチュアリを求める旅の途中で立ち寄る 賑やかなたたずまいの町の中で繰り広げられる人間模様は、疲れた体を癒す小さな楽しみでもあった・・・

そしてそんな小さな楽しみを繰り返しながら俺の旅はまだまだ続いたのだった・・・



 ある時 俺は大きな鍵を拾った・・・


目の前には頑丈な扉と万里の長城を連想する果てしなく続く長い壁・・・


俺の拾った鍵はこの頑丈な扉を開く鍵なのか?


迷う事無く差し込むとその頑丈な扉は ギギギィィーーー と音をたてながら開いたのだった・・・


目の前に広がる光景は今までのどの街よりも華やかで活気に溢れていた・・・

もしかして ココが俺が求めていたサンクチュアリなのだろうか?

長い旅で疲れていた俺をその街の人々は優しく歓迎してくれてとても居心地が良かった・・・
いつの間にかサンクチュアリの事は頭の中から消え去り、楽しさが溢れるこの街にいつの間にか俺は溶け込んでしまっていた・・・そして快楽に足元が見えなくなり、毎日が過ぎていった・・・







 
 ある日を境に俺はこの街を出る事を決めた・・・


街の人の心の奥底に潜む欲望蠢く邪気に気付くまで9年の時間がかかった・・・


そう この街にあった居心地の良さは全て幻想ということに気付かされたたのだ・・・


俺はそこで出会った人々に何も言わず最初にこの街に入ってきた頑丈な扉を開きその街を立去った・・・



しばらく歩くと小さな町が出てきた・・・その町は華やかな雰囲気は無く・・・人々の生活はけして楽ではなかった

人々の胸にはプレートが付けられていて そこには信用と信頼という言葉記されていた・・・


何日か過ごしてみると“頑丈な扉の街”に居るより安心できた・・・
それが何なのかは、今は解らない・・・



 先日、この町で出会った占い師の老婆に“拾った鍵”と“頑丈な扉の街”の事を話してみた・・・


老婆は全てを見透かしたようにこう言った・・・
“お前の拾った鍵はバビロンの扉を開く鍵でお前が過ごした街は欲望蠢くバビロンなのだよ”


“よかったと思う・・・二年で気付いて・・・”そう言いながら老婆は笑いながら立ち去った・・・




2年?!   

俺があの街で過ごした時間は9年だったはず・・・

街で暦を見てみると確かに扉を開けて入り込んだ時から二年しか経っていない・・・



不思議な気持ちのままあの時拾った鍵をこの街の近くを流れるユーフラテス川に投げ捨てた・・・


人々の胸には今も信用と信頼と言う文字が書かれたプレートが付けられてて・・・

もう少しこの街で暮らしてみようと思ったのだった・・・